文化財とは
文化財保護法では、文化財を「有形文化財」「無形文化財」「民俗文化財」「記念物」「文化的景観」及び「伝統的建造物群」と定義しています。これらの文化財のうち、重要なものを国や県が指定・選定・登録し、重点的に保護しています。国や県の指定を受けていない文化財で、葛尾村にとって重要なものについては、次のように分類し葛尾村教育委員会が指定しています。
有形文化財 | 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書籍、古文書など |
無形文化財 | 演劇、音楽、工芸技術など |
民俗文化財 | 衣食住、生業、信仰、年中行事などに関する民俗芸能及びこれらに用いられる衣服など |
史跡、名勝、天然記念物 | 古墳、城跡、旧宅、その他の遺跡、庭園、峡谷、山岳、植物、地質、鉱物など |
葛尾村の文化財
葛尾村には2021年12月現在で18の文化財が登録されています。ちなみに国や福島県に指定された文化財は、村内には1つもありません。
※指定年月日順に並べています。
※「3.イチイ」と「14.しだれ桜」は、個人宅の敷地にあるため、マップには掲載していません。
1.葛尾三匹獅子舞
江戸時代の中期にあたる元禄年間に、葛尾大尽といわれた「松本三九郎」が再興したといわれ、天王山の牛頭天王に奉納し下山してから、自宅(葛尾大尽)の庭で「笠ぬぎ」の舞を舞わせたのが長く引き継がれて今日の三匹獅子舞に至っています。三匹獅子舞は、古は牛頭天王、現在は日山神社の霊をお慰めして、部落安泰、疫病退散を祈念する目的があります。「庭入り」から「納め舞」まで12の舞で構成され、雄獅子(太郎・次郎)と雌獅子に岡崎と呼ばれる道化がからみます。
震災前は、日山神社・磯前神社の例大祭で奉納されていましたが、震災後は、かつらお感謝祭や能狂言などのイベント時に奉納されています。
- 読み:かつらおさんびきししまい
- 指定種別:無形民俗文化財
- 指定年月日:1973(昭和48)年4月28日
- 所在地:(上葛尾・下葛尾行政区)
2.磨崖仏
この磨崖仏は江戸時代の中期に造られたもので、大日如来・阿弥陀如来・文殊菩薩・正観音菩薩・地像菩薩・不動明王・虚空蔵の7体の仏像が彫られています。松本一族の2代目当主である三九郎重供(しげたす)の代に造られ、願文中にある『現当二世安楽』とは、8代目の博通・9代目の聰通(あきみち)の繁栄を祈念し、「六親眷属(けんぞく)」は父の初代「三九郎好倉」まで既に故人となっている6代前までの霊の安泰を、「七世父母」は願文人である「三九郎」その者を指しています。
- 読み:まがいぶつ
- 指定種別:史跡
- 指定年月日:1975(昭和50)年6月5日
- 所在地:葛尾村葛尾字敷井畑
3.イチイ
松本伝八郎重勝の代に、松本家の先祖「松本勘解由介親照」が、葛尾村に永住したことを記念して植樹したと伝えられています。樹齢380年といわれていて、人間に影響されない自然な形が保たれています。このイチイは樹高12.0m・幹周り3.2mで、日和田のイチイ、西山のイチイとともに福島県指定の巨木に指定されているほか、福島県指定緑の文化財にも指定されています。
- 指定種別:天然記念物
- 指定年月日:1975(昭和50)年6月5日
- 所在地:葛尾村葛尾字中清水
4.宇佐の杉
乾元元年(1302年)、松本越前忠照(まつもとえちぜんただてる)が八幡神社の御神木として植樹したと言われています。1948(昭和23)年、連合軍の日本占領政策の一つである国家神道排除の指令により、神道格を如実に現わしているという理由で境内の杉10本が伐採されましたが、現在残されている2本はあまりにも大きく鋸が通らないという理由で残されました。高さ33メートルまで成長した宇佐の杉は、700年以上風雨に耐え八幡宮の守りとして生き続けてきました。まさに葛尾村の天然記念物としてふさわしいといえます。
- 読み:うさのすぎ
- 指定種別:天然記念物
- 指定年月日:1975(昭和50)年6月5日
- 所在地:葛尾村野川字南仲ノ内71(八幡神社)
5.磯前神社社殿
1522(大永2)年に勧請。従前は薬師如来の祭祀でしたが「大国主命・言代主命」を祀っています。1869(明治2)年の神社法改正により「磯前神社」となったため、屋根には宝珠があり、欄間の彫刻には狛犬がみられます。内部には1864(文久3)年・1882(明治15)年などと明記された彩色奉納絵馬が残っています。
- 読み:いそざきじんじゃしゃでん
- 指定種別:有形文化財(建造物)
- 指定年月日:1988(平成元)年12月5日
- 所在地:葛尾村葛尾字関場100(磯前神社)
6.高御座の夫婦大杉
1688(貞亨5)年、馬頭観世音菩薩の御神木として植樹された、村内屈指の大木です。磯前神社社殿のすぐ前、鳥居の両脇にそびえたっています。樹齢は約330年、樹高約23メートルあります。幹周囲は、向かって右が3.3メートル、左が3.8メートルあります。高御座とは天皇の御座のことです。
- 読み:たかみくらのめおとおおすぎ
- 指定種別:天然記念物
- 指定年月日:1988(平成元)年12月5日
- 所在地:葛尾村葛尾字関場100(磯前神社)
7.薬師観音大尽墓石群
磯前神社の境内に松本三九郎一族の墓標石群が全部で49基残されています。これらはすべて参詣墓で、松本三九郎一族の遺骸を葬った本当のお墓は大尽屋敷跡公園から磨崖仏方面への坂道を登る途中にあります。
- 読み:やくしかんのんだいじんぼせきぐん
- 指定種別:史跡
- 指定年月日:1988(平成元)年12月5日
- 所在地:葛尾村葛尾字関場100(磯前神社)
8.金剛界大日如来仏像
葛尾大尽の5代目当主松本聡通の妻で、京都の公家の妻・イネが薬師寺に寄進したものです。これが薬師寺のご本尊となりました。大日とは「大いなる日輪」という意味で、真言宗では最高の仏です。密教で大日如来は宇宙の真理を表していて、「智」の働きを表す金剛界大日如来と「理」の働きをする胎蔵界大日如来があります。金剛とはダイヤモンドのことで、知恵がとても堅く絶対に傷つかないことを意味しています。本来如来は出家後の釈迦の姿をモデルとしているため装飾品は身につけていませんが、大日如来だけは別格で豪華な装飾品や宝冠をつけています。また螺髪(らほつ)はなく、髪は結い上げています。
- 読み:こんごうかいだいにちにょらいぶつぞう
- 指定種別:有形文化財(美術工芸品)
- 指定年月日:1995(平成7)年7月14日
- 所在地:葛尾村葛尾字北平11(薬師寺)
9.涅槃像掛け軸
下葛尾の薬師寺に収蔵されている涅槃像の掛け軸です。今から270年ほど前の1750(寛延3)年に葛尾大尽の松本三九郎一族の第7代当主松本博通(1751年死去)が薬師寺に寄進したものです。大きさは、横1.8m、縦3.5mあります。仏教の開祖であるお釈迦様が入滅(死去)したことを知った多くの弟子や動物たちが集まって嘆き悲しんでいる様子が描かれています。色鮮やかに残っていて、人物や動物たちの表情が生き生きとしています。
- 読み:ねはんぞうかけじく
- 指定種別:有形文化財(美術工芸品)
- 指定年月日:1995(平成7)年7月14日
- 所在地:葛尾村葛尾字北平11(薬師寺)
10.大般若経(600巻)
今から270年ほど前の1750(寛延3)年に葛尾大尽の松本三九郎一族の第7代当主松本博通(1751年死去)が薬師寺に寄進したもので、孫悟空にも登場する玄奘三蔵(げんじょうさんぞう:三蔵法師)が梵語(インド語)から中国語に翻訳したものです。全600巻ありますが、すべてが残っているのは福島県内でも珍しいと思われます。少なくとも270年の間、火災・戦争などに巻き込まれませんでしたし、何といっても薬師寺の歴代の役員によって、きちんと管理されてきたためです。
- 読み:だいはんにゃきょう
- 指定種別:有形文化財(美術工芸品)
- 指定年月日:1995(平成7)年7月14日
- 所在地:葛尾村葛尾字北平11(薬師寺)
11.大般若経理趣分経
今から270年ほど前の1750(寛延3)年に葛尾大尽の松本三九郎一族の第7代当主松本博通(1751年死去)が薬師寺に寄進したものです。大般若経600巻のうち第578巻を理趣分経といい、600巻のエッセンスが書かれています。この578巻目を読めば大般若経のだいたいのことは分かるといえます。
- 読み:だいはんにゃきょうりしゅぶんきょう
- 指定種別:有形文化財(美術工芸品)
- 指定年月日:1995(平成7)年7月14日
- 所在地:葛尾村葛尾字北平11(薬師寺)
12.種蒔桜
野川字関場の観照寺の近くにある桜です。この桜の開花に合わせてイネの種を蒔き始める目安にしていたことから、こう呼ばれています。
- 読み:たねまきざくら
- 指定種別:天然記念物
- 指定年月日:2008(平成20)年6月18日
- 所在地:葛尾村野川字関場
13.種蒔桜
野川字湯殿(ゆでん)の福島県道50号線沿いにある桜です。傘を広げたようなきれいな形をしています。
- 読み:たねまきざくら
- 指定種別:天然記念物
- 指定年月日:2008(平成20)年6月18日
- 所在地:葛尾村野川字湯殿
14.しだれ桜
磯前神社の先にある民家の脇に咲くしだれ桜です。文化財の看板は特に設置されていません。
- 読み:しだれざくら
- 指定種別:天然記念物
- 指定年月日:2008(平成20)年6月18日
- 所在地:葛尾村葛尾字関場
15.大尽屋敷跡のしだれ桜
大尽屋敷跡の公園の中にあるしだれ桜です。樹齢は約250年です。
- 読み:だいじんやしきあとのしだれざくら
- 指定種別:天然記念物
- 指定年月日:2008(平成20)年6月18日
- 所在地:葛尾村葛尾字敷井畑
16.鰐口
鰐口とは仏堂の正面軒先に吊り下げられた仏具の一種で、現代では神社の社殿前に吊り下げられているのをよく目にします。八幡神社に残されている鰐口は青銅製で直径約40cm、高さ(厚さ)は約16cmあります。表側には「1841(天保12)年10月、山中郷野川村惣寄進」と刻まれていて、約180年間大切に使われてきたことが伺えます。
- 読み:わにぐち
- 指定種別:有形文化財(美術工芸品)
- 指定年月日:2020(令和2)年9月7日
- 所在地:葛尾村野川字南仲ノ内71(八幡神社)
17.鈴
1894(明治27)年~1895(明治28)年に行われた日清戦争に出征した、落合・野川・夏湯地区の兵士たちの無事をこの鈴で祈った結果、全員が無事に凱旋し表彰も受けたことから、1898(明治31)年の旧正月に御礼として八幡神社に奉納されたものです。青銅製で、直径は約30cm、高さ約25cm、重さは約4.5kgあります。
- 読み:すず
- 指定種別:有形文化財(美術工芸品)
- 指定年月日:2020(令和2)年9月7日
- 所在地:葛尾村野川字南仲ノ内71(八幡神社)
18.神輿
松本與一という方が発起人となって製作し、1892(明治25)年8月に八幡神社に奉納された神輿です。
- 読み:みこし
- 指定種別:有形文化財(美術工芸品)
- 指定年月日:2020(令和2)年9月7日
- 所在地:葛尾村野川字南仲ノ内71(八幡神社)