葛尾コラム:葛尾小富士の竜子山に登ろう
竜子山は、葛尾村西部にそびえる山です。山容がとても美しく、別名「葛尾小富士」とも呼ばれます。この竜子山も登山ができる山だと知っていたのですが、一度も登ったことがなかったため、2022年7月23日(土)に登ってきました。
竜子山には3つの登山ルートがあります。うち2つは田村市船引町横道の日向前と風呂前から登るルートで、インターネットで検索するとほとんどがこの2つのルートを周回するルートで紹介されます。もう1つが葛尾村から登るルートなのですが、ネットではほとんど紹介されていません。もしかしたらこの記事が最初かもしれません。そんなわけで今回はこちら側から登りました。
県道50号線からの入り口に「竜子山」の看板はありませんが、付近に間違えやすい道路がほとんどないので、大丈夫かと思います。県道50号線からの入り口から350メートル道なりに進むと左折して砂利道に入ります。この先1キロは車も進入できますが、今回はここに車を停めて、歩いて山頂を目指します。
歩き始めてからちょうど1キロ、登山道への分岐があります。車で来た場合はここに停めます。ここに2022年7月「元気な葛尾プロジェクト」により看板が設置されました。この辺りは、それほど勾配もきつくなく、ハイキング気分で歩くことができます。
竜子山登山口入口の看板からおよそ500メートルで船引側(横道)からの登山道と合流します。ここから山頂に向かう道が分岐するわけですが、この分岐点が少し分かりにくいです。葛尾側から行くと右斜め後ろ方向の急な斜面を登るようになるのですが、分岐場所を示すものが現状ピンクのリボンしかありません。分岐のある場所は、峠を越えて切通しを抜けた直後にあります。注意して見ると斜面の上の方にピンクのリボンがいくつか見えるはずです。ちなみに私は分岐場所が分からず、船引側の登山道入り口まで行ってしまいました。
分岐を過ぎると、勾配が一気に急になります。分岐から山頂までおよそ1キロの道のりですが、その間に約260メートル登ります。登山道の両側が下り斜面となり、尾根伝いを進んでいることが分かります。途中休憩しながらでないと呼吸が苦しくなります。
分岐から380メートルほど進むと竜子姫神社の分岐看板が見えてきます。看板に沿って左折し30メートルほどで竜子姫神社があります。竜子山にはこの竜子姫にまつわる伝説が残されています。
その昔、上野川の館に「龍子姫」がおり、幼少の頃より美しくすくすくと育っていた。龍子姫は、やがて年頃となり縁あって狩り人の妻になり幸福な日々を過ごしていた。
葛尾村史「龍子山縁起」より
ある年の秋、農作物の収穫に追われていた農民たちに困ったことが起きた。それは数十頭のイノシシが農作物を毎晩、山から出てきては農家に損害を与えていた。それを見かねた龍子姫の夫(狩り人)は一人で山に入り、何頭かのイノシシを仕留めたが、龍子姫の家には5日経ち、7日過ぎても帰って来なかった。龍子姫は、毎朝晩に陰膳を上げ、一心に帰りを待ったが、とうとう白い雪が舞い降りる冬になってしまった。
悲しさと寂しさのあまり、夫を捜す決意をし、龍子姫は冬の山に入った。村人たちは龍子姫と狩り人の帰りを待っていたが、ついその気も忘れ春を迎えた。村人たちは、思い出したように大勢で山に入った。山の中腹まで入った所で龍のお守りを発見した。そのお守りは龍子姫のものと分かったが、姿・形はどこにもなかった。
村人たちは、その山に社を建て供養し、山の名を誰言うとなく『龍子山』と呼ぶようになった。
竜子姫神社から再び元の登山道に戻り、山頂を目指します。計測では山頂まであと620mほどです。相変わらず急勾配が続きます。山に入ってからは山頂を目視することができず、また麓の風景もほとんど見えないため、体感的にあとどれくらいで山頂に着くのか想像できず、心理的にとても苦しく感じました。
竜子姫神社から270~350メートルほどのところには、2か所3本のロープが用意されている急斜面がありました。ここを登りきると山頂かと思いきや、実はまだもうちょっとあるんです。
どこまで行けば山頂なのか分からず、心理的・体力的にはかなり苦しかったですが、やっとの思いで山頂に着くことができました。車を停めて歩き出してから57分。途中道を間違えたり、竜子姫神社に参拝したりしながらにしては早かったように感じます。
山頂のスペースはそれほど広くなく、4メートル四方程度しかありません。周りの木がなければ眺望は最高だと思うのですが、木々が生い茂り、残念ながら眼下を眺めることはできません。
それでも竜子山登頂の達成感は格別でした。
皆さんも是非、竜子山登山に出掛けてみてください。
最後に今回の登山の際、計測に使用したデータを添付します。